一章 紅の相克 (5)

ブックマークに追加

 乳首の片方と股間とに遠慮のないねっとりとした愛撫が続くうち、次第に少年の顎が上がって、その身が震える頻度が高くなってきた。いつしかその全身が体温の上昇を示して淡く色付き、明らかに脂汗とは異なる珠のような雫が肌の上に浮かんでいた。
「う……っ、く…………」
 時折どうしても抑え切れないように、その喉の奥から震える呻きが上がった。その度にユアンはぎりと奥歯を噛み締め直し、両の拳を握り締めてまた堪えにかかる。
 しかしとどめようもなく唇から洩れ落ちる吐息は潤みを増し、きつく閉じられた目許には、先程までは見られなかった艶が纏いつくようになっていた。
 フィロネルは抑え切れずに昂まってゆく少年の反応をじっくりと愉しみながら、その乳首と股間を嬲り続ける。
 今や隠しようもなく、少年のそこははっきりと性の昂ぶりを示していた。ペニスは完全に勃ち上がって上を向き、少年自身の薄い下腹に付くほど反り返っている。その乳首もフィロネルに嘗めまわされ、噛まれて引っ張られることを繰り返されるうちに、手付かずのもう片方の粒と同じ器官とは思えないほど赤く膨れ上がっていた。
「……くぅ、う……ッ」
 ぬちゅりと香油の絡む濡れた音を立てながら陰茎を扱かれ、敏感な裏筋や亀頭をぬるぬると撫でられるたびに、びくりとユアンの若く柔らかく締まった身が引きつる。徐々に引き結んでいることもできなくなってきたその唇が、ぐっと呼吸を詰めては荒い息遣いを繰り消した。
 それでも抵抗することを止められないのだろう、快楽を得ているというより苦痛を堪えているような声が、幾度もその喉の奥から洩れ落ちた。震えながら引きつるユアンの全身が、今や熱く吹き出した汗に濡れていた。
「あ……あ、ッ……もう、や、やめ、ろ……っ……」
 はじめは小刻みだったユアンの身体の震えが、そのペニスの膨らみがいや増してゆくごとに、断続的な痙攣に変わってゆく。身動きもできずに晒されたあられもない部位への刺激に、そのうちユアンは大きく首を振り、逃れたいように身をよじらせ始めた。
「う、あッ……あ、ッ」
 しかしどれほどもがいても、ぴんと伸ばした腕を引っ張られて拘束された身体は身動きすらままならない。膝を曲げて大きく開かれた股間を庇う術もなく、そこに与えられる残酷な刺激を、ただひたすらにユアンは受け続けた。
「ぐっ……っはぁ、あッ……あぅッ」
 拘束されたままの下肢ががくがくと痙攣し、大きくユアンが喉をのけぞらせた。そのペニスはこれ以上ないだろうほどに熱さと硬さを増していたが、しかしどうしても嫌だというように、ユアンは唯一自由に動く首を打ち振って悶える。合い間に継がれる呼吸音はひどく苦しげで、汗びっしょりの胸板が大きく上下に弾んだ。
 このままでいたらひきつけを起こすのではないか、というほどの様子に、フィロネルは軽く感心した。続ければいずれどうにもならず達するだろうが、この激しい抵抗を見ているうちに、ふとそれだけでは今ひとつ面白みに欠けると思った。
 フィロネルがいったん手を止めると、強張り続けていたユアンの全身からがくりと力が抜けた。しかし細かい痙攣は止まらず、拘束され立てられた膝も震えている。
 フィロネルは完全に息の上がっているユアンの頬を掴み、ぐいと自分の方を向かせた。
 ユアンの濃紺の髪は汗で重く湿り、ほとんど黒に見えるそれが、濡れた額や頬に乱れて張り付いている。何度も噛み締めたせいだろう、唇の色も最初に比べて随分と赤い。涙と汗が滲んで潤み切った藍色の瞳はどこか虚ろで、その弱りきった様は、嫣然とした頽廃的な色香に満ちていた。
「おまえが気をやる瞬間の顔は、どんなものだろうな」
 間近からフィロネルが言うと、虚ろだったユアンの瞳がゆっくりと瞬き、やがて何を言われているのか理解したように瞠られた。打たれたように正気の光が戻ったその瞳に、フィロネルは薄く笑んだ。
「こ……こんな……これで、こんなことをして、貴様は楽しいのか……ッ」
 湧き上がる屈辱感と憤怒のままに、ユアンが落ち着かない呼吸の下から呻いた。望まぬ快楽に翻弄され疲弊し切っていても、その瞳に宿る強烈な炎は衰える気配もない。その反応がフィロネルの背筋にぞくぞくとした快い戦慄を走らせ、止めたものの少年の股間にそのまま置いていた手に力を加えさせた。
「あぁあッ!」
 勃起しきった硬く熱い陰茎を、潰れるのではというほど力任せに握り締められ、瞬間に全身を強張らせてユアンが悲鳴を上げた。すぐにそれは緩められたが、ユアンはたまらずに叫んでしまったことを悔やむように、肩で息をしながら唇を噛んだ。
「愉しいな。おまえのように高慢な者が悲鳴を上げて悶えるのは、実に快く愉快な見世物だよ」
 フィロネルはユアンの耳元に唇を近付けると、殊更優しく言って耳殻を柔らかく嘗め上げた。ユアンがひくりと反応しながらも、信じられないように瞳を動かしてフィロネルを凝視した。
「貴様は……ッあ、ぅッ……!」
 一瞬絶句したユアンが口を開くより先に、フィロネルはそのペニスを再び扱き始めた。
 いきり勃った陰茎にフィロネルの長い指がまとわりつき、香油と先走りとにぬめってぐちゅぐちゅとせわしない音を立てると、ビクンとユアンが拘束された身を跳ねさせた。たちまちまた呼吸が上がり、悲鳴じみた声が喉から洩れかけたが、戻ってきた理性が働きかけたのだろう、ぎっと歯が噛み合わされた。
 その頬に指をかけ、顎を掴んで、強引にフィロネルは自分の方に視線を固定させた。苦痛のせいなのか快楽のせいなのか、藍色の深い瞳は溺れたように涙に濡れている。もういつ達してもおかしくないところまで追い詰められている、しかしそれに全身で抵抗している汗まみれの少年の顔は、可哀想なほど、そしてひどく凄艶に歪んでいた。
 幾度もユアンが息を飲み、苦悶するようにきつく眉根が寄せられ、噛み合わされていた奥歯が震えた。いよいよ限界を示すように、引きつり強張りきった全身が絶え間なく痙攣し、少年の腰がびくびくと動いた。
「……み、みる、な……ッ……」
 かろうじで搾り出すように呻き、顔をそむけようとしたユアンの顎を、しかしフィロネルはがっちりと痛いほど指で捉えて放さなかった。
「実に憐れでそそられる……このまま見ていてやろう。俺の目の前で、無様に果てるがいい」
 フィロネルが至近距離から瞳を細めて囁くと、ユアンの藍色の瞳に涙が盛り上がって頬に伝い落ちた。自分が崩れ堕ちることを予感し、けれどもう抗い切れない絶望と口惜しさが、涙に姿を変えたようだった。
「あ、あッ……あああぁッ!」
 フィロネルの手の中で限界まで張り詰めていたユアンのペニスが、遂にそこで決壊した。膨らみきった先端から、白濁した灼熱の快楽の証が勢いよく迸る。
 拘束された四肢を壊れた人形のように強張らせ、ユアンは引きつった悲鳴のような咽び泣くような声を洩らしながら、なまじ堪えていたせいで長引く精の排出に震えた。間近でその苦しげで悲痛な愉悦に歪んだ顔を充分に堪能した後、フィロネルは震える顎から手を放してやった。
 このままただ快楽だけを与えて終わらせてやるつもりはなかった。達したものをそこで解放せず、フィロネルは尚も絞り尽くす様に、容赦なくペニスを揉みしだく。ぐったりしていたユアンは、殴られたようにびくりと腰を引きつらせ、全身を滝のような汗に濡らしたまま堪え切れないように呻いた。
「ひっ……ぅあ、あぁ、ッや、やめ、ろ……うああぁッ!」
 熱く燃え上がった少年の股間は、手荒に強引に再び勃起させられた。歯止めがきかなくなったように今度はすぐに放出したが、その最中にも萎えてゆくものは扱かれ続けた。
 粘膜が充血して過敏になったそこを嬲られ続けることは、少年にとって既に苦痛でしかなかった。三度目を過ぎると陰茎はそこまで硬くはならず、勃ち上がってもなかなか放出されず、それでも吐き出すまで捏ね回されるので、時間がかかる上にいっそう苦痛が激しくなってゆく。やっと薄くなった白い体液を放出しても、憐れな陰茎が少しでも反応を見せれば、フィロネルは嬲る手を止めなかった。
 こんな扱いを受けたことなど今迄なかっただろう、ユアンはかなう限り身をよじらせながら、かすれ切った声で苦鳴を上げ続けた。苦しげに喘ぎ、許しを請うように汗の雫を散らしながら何度も狂ったように首を振る少年の姿を、フィロネルは喉の奥で笑いながら眺めていた。
 精液を搾るだけ搾った後、その真っ赤に腫れた亀頭をぐりぐりと親指の腹で嬲ってやると、ユアンが全身を引きつらせながら弱々しく叫び、痙攣した挙句に最後に潮を吹いた。完全に顎が上がったまま、かくりと唐突にその身体が動かなくなる。苦痛と涙に歪んだその顔を見ると、ユアンは気を失っていた。
「これで落ちるとは、可愛いものだな」
 手荒な扱いをしている自覚はあるが、フィロネルの嗜好からすれば、これくらいはさほど珍しいことでもなかった。そもそも自分を殺しにきた暗殺者であるこの少年を優しく扱ってやる義理など、欠片ほどもない。
 フィロネルは帯をほどいて自身の衣の前を軽くはだけてから、気を失ったままのユアンの香油と精液まみれの股間を見た。大きく開脚し固定されたそこには、きゅっと締まった小さな孔がある。これまで誰にふれられたことも、人目に晒されたこともないだろうそこは、淡く色付いてその在り処を控えめに表していた。
 まったく陽に焼けない位置にあるそのあたりの肌は、いっそう抜けるように白い。すべらかで僅かほどの傷も染みもないその中にある、可憐な桜色に窄まった孔は、少年のものというよりまるで処女のもののように慎ましく見えた。
 まあ、ある意味で処女であることに違いはないか。小さく笑いながら、ぐったりと動かないユアンの頬を、フィロネルは手の甲で軽く叩いた。
「起きろ」
 ユアンの意識はそれほど深く落ちていたわけではなかったようで、すぐにしわがれた呻き声がその唇から洩れ、力なく瞼が動いた。
「……あ……」
 億劫そうに開かれた藍色の瞳が、自分を覗き込んでいるフィロネルをすぐに捉える。そこにいるのが誰かを認識した途端、ぐったりしながらもユアンの瞳に気丈さと強い感情の光が甦った。ユアンは口惜しげに歯軋りし、何も口は開かなかったが、衰えるどころかむしろ深みと鮮烈さをいや増したような憎悪の炎が、透明な虹彩に揺らめいた。
「ふん。まだまだ生きが良さそうだな」
 ざわざわと肌の内側を這う悦びに、フィロネルは笑んだ。こうでなくてはつまらなかった。この、どんな至玉よりも美しい瞳。何があろうと臆せず正面から斬りつけるように見返してくるからこそ、これほどその輝きがフィロネルを魅了する。
 フィロネルは用意しておいた布を取り上げると、物言わず少年の口に猿轡を噛ませた。
「ぐっ……!」
 いきなりのことに、ユアンが目を見開く。次は何をされるのか、というように凝視してきたその顔に、フィロネルは言葉で答えるよりも、その股間に指を這わせた。その下の方にある小さな孔に、ずぶりと指を突き込む。そこの中は熱く柔らかかった。
 少年がびくっと震え、猿轡の下で呻いた。見開いた目をきつく瞑り、かと思うと信じられないように瞬き、その瞳が凝然とフィロネルを映し出す。
 少年の驚きと戸惑いを直に感じ取りながらも、フィロネルは構わずその中に突き込んだ指をぐちゅぐちゅと動かした。滴る香油でぬめりは充分であるものの、誰のものを受け入れたこともないそこは、かたくきつく締まって異物の侵入を拒もうとした。
「ぐっ……う、うっ」
 無造作に狭い体内で動かされる指に、ユアンが拒むように首を振って、しきりに呻く。その身体に今までで最も顕著な鳥肌が立ち、新たな脂汗が浮き始めた。
「さすがに衝動的に舌を噛まれてはかなわんからな」
 そのフィロネルの言葉とこの扱いに、これから何をされるかを理解せざるを得なかったのだろう、ユアンの目許が明らかに怯えてひきつった。
 フィロネルは指を二本に増やし、苦痛に呻くユアンに構わず更にもう一本増やした。もともとこれは、ユアンの苦痛を和らげるためではない。多少は孔がほぐれていなければ、挿れる側も痛みを生じるからだ。
 狭い肉道の中を何度も他人の指が往復し、ぐちゅりと動かされて掻き回されるたびに、ユアンが呻いて汗まみれの肌に鳥肌を立てた。この程度で良いかと、頃合を見てフィロネルは指を引き抜く。初めて異物に嬲られたユアンのそこは、香油を伝わせながら先程よりも赤く色付いていた。
「できるだけ力を抜いていろ。裂けて使い物にならなくなるぞ」
 腰を持ち上げられ、そこにフィロネルの熱く滾るものを押し付けられたユアンは、涙に濡れた目許を嫌悪と恐怖に引きつらせた。ユアンは何度も首を振り、なんとか逃れようともがいたが、拘束を受けあまりにも無防備に晒されているそこを庇う方法などあるわけもなかった。
 多少はほぐしたもののまだまだ硬く狭い中に、フィロネルは強引に己のものを突き立て、埋め込み始めた。
「うううッ……うぅ……ッ……!」
 熱い尖端にぐちぐちと小さな孔が無理矢理に押し広げられ、強張りくぐもった悲鳴を上げるユアンの全身に、一気にさらに脂汗が浮く。荒い呼吸に濡れた腹が上下し、その動きと陰影が妙に淫らだった。
 これしきで壊れてもらっては困るが、少年の身を限界まで責めてみたくもあり、様子を伺いながらもフィロネルはその腰を引き付けて容赦なく腰を進めていった。
 ずぶずぶと太く熱い肉茎が狭い内臓の中を進み、誰を受け入れたこともない身体を手加減なく割り裂かれてゆく激痛に、少年は喉をのけぞらせて幾度も痙攣した。
 さすがに挿入には少し時間がかかり、根元まで押し込むと、そこでフィロネルは一度腰を止めた。
 挿れてしまえば、ユアンの中は別の生き物であるように熱く蠢いて、狭くはあったが血の通う肉は蕩けるように柔らかかった。それが絡みつくようにひくつきながら締め付けてくることが、陶然とするほど心地良く、芯からフィロネルの腰を炙る。
 下半身に灼熱する楔を埋め込まれたユアンは、全身の震えが止まらないまま、ぜえぜえと苦しげに肩で息をしていた。きつく顰められ閉じられた目から涙の零れ落ちる頬は、苦痛のせいだろう血の気がひいていた。
 ユアンの苦悶する様子も、蠢いて締め付けてくるその狭く熱い体内の反応も、何もかもがフィロネルの欲望と愉悦を甘美に刺激する。挿れただけでこれほど酔わされたことが、かつてあっただろうかと思う。
 ​​​──この少年のすべてを、あの美しい瞳を、この先もずっと我が物としたい。
 ユアンの汗と涙にぐっしょりと濡れた頬に、フィロネルは掌を伸ばした。猿轡の下で乱れた呼吸を繰り返しながら、びく、と小さくユアンが震え、青ざめた瞼を重たげに開いた。
 フィロネルが挿入したまま前屈みになると、ユアンがさらに下腹を抉られてまた苦痛の呻きを上げた。ひくひくと締め付けてくる、熱く密着した柔らかな肉を快く感じながら、フィロネルはユアンの顔を覗き込む。長い黄金の髪がさらさらと流れ落ち、燭台の明かりにふんわりと豪奢に輝きながら、憔悴した少年の顔のまわりを囲んだ。
「おまえをこの先も生かしてやろう。ユアン」
 残酷な行為と比較すると不釣合いに優しい仕種と声で、フィロネルはユアンの頬にふれながら語りかけた。何を言われているのか分からないようにユアンがそれを見返し、眉根を寄せた。
 その口を塞いでいる猿轡を、フィロネルは外した。殺されることはないと分かれば、ユアンは何をされようと、衝動的にでも自害を試みることはないはずだと判断した。
 猿轡を外されたユアンは、楽になった呼吸に大きく息を吸い込み、喉を喘がせた。とてもすぐに言葉は発せないらしいその様子を眺めながら、フィロネルはその頬を撫で、濡れた濃紺の髪を指で梳く。ユアンが苦しげに呼吸をするだけでもその温かな内臓が動き、そこに奥深くまで突き込んだ己のものを押し包むのにぞくぞくとした。
「ちょうど今は従者の席が空いている。おまえをそこに取り立ててやろう」
「……なにを、言っている……?」
 続けたフィロネルに、何がなんだか分からない、という困惑しきった様子で、疑わしげに険しい眼差しをユアンは突き上げてきた。それはそうだろうと、フィロネル自身も思う。
 こんなことを暗殺者に対して言う自分は、酔狂なのか大馬鹿なのか。だがそんなことはどうでもいい話だ。自分はただ、この烈しく高潔で何より美しい炎が欲しいだけなのだから。
 どこまでも暗い淵に魅き込むようにうっすらと微笑したフィロネルに、ユアンがのまれたように一瞬呼吸を止めた。
「そこでおまえは、俺に仕えながら俺の命を狙えばいい。そのかわり、おまえの命は俺のものだ。俺のすることはすべて受け入れろ」
「あんた……本当に何を言っているんだ……?」
 困惑を通り越した顔で、ユアンはフィロネルに問う。くくっとフィロネルは広く逞しい肩を揺らして笑った。その僅かな振動でさえ深く穿たれた下腹に響くようで、ユアンが顔を歪めた。
「おまえに殺される程度なら、俺もそこまでだということだよ」
 傲慢なほどの自負と自尊心と、満たされることのない渇望のぎらつきと、そして何より陶酔した熱を紫色の瞳に揺らめかせ、フィロネルはユアンの濡れて黒に見える前髪を掴んだ。その痛みにもまた顔をしかめたユアンに、フィロネルはさらに顔を近づけて、低く囁きかけた。
「ひとつの運試しのようなものだ。俺は生半可なものに敗れる気はない。無論、おまえごときにやられる気もない。おまえはなかなか俺を愉しませてくれるからな。受け入れるというなら、おまえを好きにさせてもらう。そのかわり」
 口付けるほどに唇を近づけて、フィロネルは豪奢で尊大な魔性のように深く微笑んだ。
「おまえが俺を殺そうとするのも、咎めはしない。やりたいようにやれ。……そう悪い話でもなかろう?」
 のまれたように黙り込んでいたユアンは、フィロネルが身を起こして顔を遠ざけると、ひゅっと喉を動かし、ようやく瞬いた。信じられない、というように、藍色の瞳が半ば呆然とフィロネルを見返す。
「あんた……頭がおかしいんじゃないのか」
 心底からのような言葉に、フィロネルは可笑しくてまた笑った。
「だろうな。自分を正気だとは思っていない」
 ​​​──「あの日」から。自分を取り巻く何もかもが、自分自身までもが崩壊した、あのときから。
 自分の上でくつくつと笑い続けているフィロネルに、ユアンは下腹に痛みが響くのか顔をしかめた。その様子をゆらりと見下ろし、フィロネルは前触れなしにユアンの腰を掴んだ。
 己の腰を引いて、勢い良くユアンの中をずぐりと奥まで突き上げる。
「ひッ!」
 いきなり動かれて強烈な痛みが下半身から駆け上がり、ユアンは悲鳴を上げた。抵抗もできないその身体を、フィロネルは好きなように抱えて、己の滾ったもので猛然と穿ち始めた。
「ひぃッ、ヒッ、あ、あぁッ……!」
 好きに揺さぶられるしかない腰を、かつて味わったことのない痛みが抉り、ユアンは喉にからまった悲鳴を上げた。本来そのためのものではない器官を無理に押し広げられ、突き込まれて内臓を抉り上げられる痛みは、少年の想像を絶していた。
「や、やめ、ろ……抜け、あ、あぁっ!」
 強制的に他人の器官と繋げられた箇所から、ぐちゅぐちゅと聞くに堪えない無惨で淫猥な音が響く。殊更にユアンに苦痛を与えるための、そして己の欲望を貪るためだけのフィロネルの動きは、大きく乱暴で容赦がなかった。
 ユアンは途切れがちに咽ぶように喘いでいたが、ふとその抵抗や呻きが弱まった。休みなく身体にかけられ続ける負担と痛みとに、半ば意識が落ちかけている様子だった。その頬を、フィロネルは手加減なく打った。
「気を失うのは許さん。起きろ。せいぜ惨めに泣き叫べ」
 無抵抗の者や、気絶した者を犯す趣味はなかった。それをして、いったい何が愉しいというのか。
 呻いて瞼を揺らし、そしてすぐに身を貫く激痛に引きつったユアンの前髪を掴んで、フィロネルは寝台に押さえつけた。腰を揺らしながら見下ろすと、ユアンは苦しげに喘ぎ、脂汗を浮かせて涙を零しながらも、フィロネルの言葉を聞き取ったのだろう燃え上がるような眼差しで睨み上げてきた。
 その悔しげで少しも揺るがない眼差しが、鳥肌が立ち網膜に焼きつくほど、フィロネルにはぞくぞくしてたまらなかった。
 ユアンは自由にならない身を突き上げられ抉られながら、ぎりと歯を噛み合わせて、それきり悲鳴を上げなくなった。神か王のように自分の心臓を握り、好きに陵辱して嗤っている男を睨みつけ、ユアンは血を吐くように声を発した。
「殺してやる、からな……貴様だけは、絶対にっ……絶対に、許さない。ぐッ……か、必ず、殺して、やる……ッ……!」
 何度も息を飲みながら、途切れがちに、それでも憎悪と怒りに灼熱する烈しい眼差しと声を叩きつけてくるユアンに、フィロネルは声を上げて高く嗤った。腰に圧倒的な熱が押し寄せ、ユアンの腰を引き付けてひときわ深く乱暴に、奥までの抜き挿しを繰り返して、叩きつけるように放出する。それはかつて味わったことの無い恍惚と、眩暈がするほど甘美な興奮だった。どくどくとユアンの奥に精が放たれてゆくのを感じるが、一向に萎える気配がなかった。
 フィロネルはそのまますぐに動き出し、再びユアンの震える身体を貪り始めた。激しい苦痛に堪えているのが肌身から伝わってくるユアンの汗まみれの腹を撫で、乳首をちぎれるほどに捻り上げて、懸命に悲鳴を殺そうとして引きつるユアンの反応を、フィロネルは嗤いながら愉しんだ。

 気が済むまで何度も存分に貪り、フィロネルはようやくユアンを解放した。
 責めが始まってから既に相当な時間が過ぎており、その間一切休むことを許されなかったユアンは、完全にぐったりとして動かなかった。下腹からフィロネル自身を引き抜かれたときに呻いたので、かろうじで意識はあるようだったが。
 手加減しなかったのだから当然だが、ユアンの下からはかなりの出血があり、堪えるうちに噛み切ったのだろう唇からも赤い血が滲んでいた。疲弊しきって目許が落ち窪み、病人さながらに青ざめた少年の顔は、手当ての必要を示していた。
 ユアンは途中からはさすがに朦朧となって弱々しく喘いでいたが、とうとう最後までその精神は陥落しなかった。許しを乞うこともせず、意識が落ちかけてはフィロネルの存在を認識すると、弱々しいながらも涙に霞んだ瞳で睨みつけてきた。
 ​​​──この先どれほど、この少年は愉しませてくれることだろう。
 自分自身が壊れるほどに傷つくことも厭わない少年の有り様に、その痛々しいほどの高潔さに、うっとりと戦慄する。そして、それを欲しいと思う。その渇望は何処か、愛しさという衝動に似ていた。
 フィロネルはユアンの唇に舌をなぞらせ、そこに滲んだ血をゆっくりと嘗めた。傷口を嘗められた痛みに、ユアンが僅かに眉根を揺らして薄く瞳を開いたが、呻くこともなくすぐに瞼が落ちた。
 舌の上でじんわりと甘い味を転がし、その香りまで楽しみながら、フィロネルは流れ落ちる長い金髪の下で薄く笑んだ。
 どうやら完全に気を失ったらしいユアンの青ざめた頬に掌をなぞらせ、その唇に今度は自らの唇を重ねると、フィロネルはぺちゃりと音を立てて、滲む血を完全に嘗め取った。

ブックマークに追加