妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

八重山振りの君

八重山振りの君 (六)

外に出てみると、村の外に続く道のほうに、金色に光る何かが見えた。大きなものではない。葵の膝丈まであるかないか、というくらいの、まるで小型の獣か、さもなければ幼児くらいの大きさだ。 葵が気が付いたことを察したように、すっとそれは遠ざかる。少し...
八重山振りの君

八重山振りの君 (五)

その、夜半過ぎ。ふっと、葵は目を覚ました。 よく寝ていたように思う。何故自分が目を覚ましたのかよく分からず、葵は仰向けになったまま、ぼんやりとあたりを眺めた。 光源が囲炉裏の小さな火種だけなせいで、小屋の中はほぼ夜の帷に呑まれている。粗末で...
八重山振りの君

八重山振りの君 (四)

季節をいくらか早とちりしてしまったらしい一匹だけのひぐらしの澄んだ声が、深まってゆく夕暮れの空に響いていた。 村のあちらこちらで、夕餉のために煮炊きする匂いと湯気が立ちのぼっている。地面を歩けば影法師が揺らめきながら長く長く伸びてゆく、そん...
八重山振りの君

八重山振りの君 (三)

きゃっきゃ、と賑やかにはしゃぐ子供たちの声が、日毎に夏色の深みを増してゆく青空に響き渡る。 村の中程にある広場のような場所で、元気な盛りの子供たちの相手をしている葵の様子を、夜光はいくらか離れた木陰に座って眺めていた。 月天の羽衣──夜光の...
八重山振りの君

八重山振りの君 (二)

その日は、いったんその場で野宿をすることにした。 手当てをしたとはいっても、夜光の捻挫はかなりひどく、右脚にまともに体重をかけられなかった。 二人の道中は、夜光の義父である「終の涯(ついのはて)の長」から賜ったいくつかの宝物のおかげで、只人...