六花咲きて巡り来る

六花咲きて巡り来る

終章 ─ 匂夢 ─

ひらりひらりと、花の様な雪が降る。その中で、小夜香は随分長いこと、槐の胸元にしがみつくようにして泣いていた。 待っていろ、とだけ言われて、その言葉ひとつを信じて、ずっと槐の帰りを待ち続けていた。別れたときの槐の状態があまりにひどかったから、...
六花咲きて巡り来る

禍夢 ─ 残夢 (四) ─

斬った、と思ったときに手応えがあった。それは人の生身を斬ったとは思えないような、かつて味わったことのない奇妙に柔らかいような感覚だった。 だがそんなことは構わず、斬り降ろしたそのまま太刀を投げ出し、葵は両腕で夜光を引き寄せて抱き締めた。 斬...
六花咲きて巡り来る

禍夢 ─ 残夢 (三) ─

「!────」 夜光が身じろぎし、ものすごい力で葵を振り解いて突き飛ばした。それと共に、ゆらめくように立ったその身に、鬼火のように赤黒い炎が灯り出す。その炎の色は、あの観音像を包む炎と同じ色をしていた。「うっ……」 突き飛ばされた拍子に、葵...
六花咲きて巡り来る

禍夢 ─ 残夢 (二) ─

颯介。その名を、夜光が語ってくれた昔語りの中から、葵は思い出す。確か神島の地下に入り込み、そこにあった呪物に粗相をして、蛇神の封印を歪める原因となった人物の名だ。 正直を言えば、葵には今このときまで、夜光の見ていた夢というのが「過去に起きた...
六花咲きて巡り来る

禍夢 ─ 残夢 (一) ─

──このままでは、蛇神がまた蘇る。 眼を覚ますなり、そう葵に強く訴えた夜光は、そのまますぐに起き出そうとした。「ここの近くに、蛇神に結びつく何かがあるはずです。それを早く見付けなければ」 そう言う夜光の白い素肌のあちらこちらに、まるで蛇が這...