六花咲きて巡り来る

六花咲きて巡り来る

禍夢 (十二)

その龍の高く美しい一声を聴いたとき、槐は咄嗟に状況が把握できなかった。 なんとかあと一太刀、と思いながらも、完全に手負いの獣となった蛇神の挙動もますます苛烈さを増し、斬り込むことはおろか近付くことすらろくに出来ない状態が続いていた。 いくら...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (十一)

抱き合って震えながら状況を見守っていた亜矢と真麻が、突然「あっ」と声を上げた。夢から覚めたような、信じられないような顔で、かつて湖だった場所の中ほどにいるものたちを見る。「あれは……あのひと、角がみえる……まさか、鬼……?」 茫然としたよう...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (十)

連日の大きな地震に驚いて各々の家から飛び出してきた里の人々は、それに続いた光景に揃って肝を潰した。 赤い月が不気味に照らし、湖が海のように波立った中を、神島が崩れながら沈んでゆく。沈んでいったあとに巨大な渦巻きが発生し、さらには湖の水という...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (九)

体勢はやや低め、いつでも武器を抜けるようにして身構える。 これまでの状況や、今目の前に顕われた蛇神の様子からして、これはどうやら死の穢れ、死にまつわる様々な陰と負の因子の塊だ。死穢、腐敗、それから死に対する拒絶や恐怖や怒り。転じて、生あるも...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (八)

寝具に横たわっていた小夜香が、何の前触れもなく、ふっと眼をさました。「あら、小夜香様。お目覚めですか」 たまたま様子を見に来ていた亜矢が、それに声をかける。 小夜香はそれに見向きもせず、眼を見開いて虚空を見回した。「……秋人兄様?」 ぽつり...