妖は宵闇に夢を見つ 一章 終の涯(一) 墨で塗り潰したような重い空に、赤々とした炎が照り映えていた。 わぁん……と、大気が飽和するような、鼓膜が痛くなるような音が、赤黒い空に向かって沸き上がっている。それは怒号であり、悲鳴であり、乱暴に地を踏みしめる足音であり、武器と武器とがぶ... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ
妖は宵闇に夢を見つ 序章 夜を紡ぐ月 『ほう……妖になりたいと申すか』 しっとりとした闇のはびこる、深更。 決意を固め、突然訪ねて「願い」を告げた自分に、陵みささぎという名の天女はそう言って笑った。その唇は、血を塗ったように紅あかかった。 美しいが物寂しい虫の声が韻と響き... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ