「……光。夜光……」
うっすらと、自分を呼ぶ声がする。
薄暗い濁り水の中を、ゆらゆらと漂っているようだった。手足が重くて、それこそ水の中にいるように自由がきかない。なんだろう。さっきまで、白くて白くて……他には何も見えないような、清浄なほどの雪景色の中にいた気がするのに。
そう思った途端、ぬるい濁り水の中から、ふうっと身体が浮き上がった。
静寂に沈んでいたはずの耳に押し寄せたのは、頭の中を掻き回されるような、喧しく何かが騒ぎ立てる声。煩くて眉を顰める。それに、暑い。頬も、胴も、手足も、じわりと炙られて火照るようだ。
額の髪が揺れて、ひんやりと濡れた何かが載せられた。うだるような暑さの中、その冷たさが、染みるように心地良い。その僅かな重みと感触に、夜光は瞼を揺らした。
水中から顔を出したばかりのように、視界が滲んでいる。そのぼんやりとした明るさの中に、夕陽を思わせる鮮やかな色が揺れていた。
「夜光。大丈夫か?」
「……葵…………?」
呼びかけて驚いたほど、うまく声が出なかった。それでも、自分を覗き込む深い青みを帯びた瞳が、ほっと緊張を緩めるのが分かった。
「良かった。気が付いたか」
一纏めに結い上げられた夕陽のような朱色の髪が、こちらを覗き込む動作に、糸束がほつれるように揺れる。そこにちらちらと、粗末な破れ窓から差す光が絡まっていた。
やかましいほどに折り重なって響く蝉の声。何かが騒ぎ立てているようだったのはこれだったのか、と、少しずつ戻り始めた五感と共に思う。
「私は……どうしたの、でしょうか」
頭がぼんやりして、状況がよく飲み込めない。全身が、鉛にでもなってしまったのかと思うほど、沈み込みそうに重い。それに熱くて、気怠くて、横になっているのに目が回る。まるで不快にぬるんだ日向水に浸かっているようだ。
「倒れたんだ、山道を歩いていたら。きっと疲れが出たんだろう」
優しい声と共に、胸元に載せていた力の入らない手を、葵が握ってくれた。それで、おやそんなところに自分の手はあったのか、と思う。ぎこちなく指を動かして、なんとか葵の手を握り返した。
「そう、ですか……すみません。私と、したことが……」
「気にするな。気分はどうだ。苦しいところは?」
何度か瞬くと、船酔いのように揺れていた視界が、いくらかはましになってきた。
「ぼうっとしますが……苦しいところは、ありません。でも、頭が、だいぶ痛みます。それに、眩暈が……」
ずしりと、頭を後ろに引っ張られているような、重たく芯に響く痛みがある。目を開けていると、光が入って余計に痛みが増した。
「そうか。随分熱が高い。側についているから、ゆっくり休め」
「はい。……ここ、は……?」
葵がいることで安堵はしていたが、今現在の状況がまるで把握できない。熱をもった手を、ぽんぽんと、宥めるように叩かれた。
「山の中にある古寺だ。行きずりのお坊さんが助けてくれたんだ。安心していい」
「そう、でしたか……それは、お礼を、言わないと」
「いいから。それは、せめて熱が下がってからにしろ」
苦笑するような中にも、葵のいたわりと、何より夜光の様子に胸を痛めている気配が伝わってくる。夜光はそれで心がほどけて、そうしたらふうっと、また意識が遠のいた。
葵の言う通り、今は眠ろう。どうせこんな状態では、無理をしようとしても何もできない。それに何より、葵に気懸かりな思いをさせたくない。
素直にそう思ったら、夜光の意識はまた、抵抗もなく深い眠りの底へと誘われていった。
再び、まるで気絶するように意識を失った夜光を、葵はしばらく動かずにじっと見守っていた。完全に眠り込んだようであるのを確認して、夜光の汗ばんで熱を持った手を、そっと放す。
さっきまでは真っ青になって震えていたのが、急速に熱の上がる前兆だったのだろう。不調を物語るように、ただでさえ雪のように白い夜光の肌は、今はいっそう色を無くしていた。額に汗の珠が浮き、頬だけが不健康にうっすらと赤い。
胸の苦しさはないようで、呼吸は深く落ち着いている。胸がほとんど上下せず、かえって呼吸をしていないのではないかと不安になるほどだった。
「──お連れさんの具合は、どうですか」
汗を拭いてやりながら、すぐにぬるくなってしまう夜光の額の濡れ手拭いを取り替えていたら、不意に後ろから声をかけられた。
ぎょっとして振り返る。部屋の前の廊下に、いつの間にか気配も無く、僧衣の老爺が立っていた。
たいして広い部屋でもないので、距離は思いのほか近い。いくら夜光に注意が向いていたとはいえ、まったく気がつけなかったことに驚いた。
皺深い気難しげな印象の顔を、老爺はじいっと葵に向けている。老爺の左半面には、何にやられたものか額から大きな古傷が走っており、そのせいか随分人相が険しく見えた。
「だいぶ熱が高いようです」
老僧を見ながら、葵は気を取り直して受け答えた。
「そうですか」
老僧は、今度は横たわった夜光に視線を向ける。その眼が、よくよく見ようとするように細められた。
老僧は唇を真一文字に結んだまま裸足を運んでくると、葵の横、つまり夜光の枕元に、くたびれた僧衣の裾を広げて座った。裾が解れてかなりの襤褸になった僧衣は、すっかり色が褪せて、黒というより灰色のようだった。
胡座をかいてばさりと袖を整えた老僧の仕種に、葵は何気なく目を向け、ふと気が付いた。
左半面に走るものと似た古傷が、老僧の袖の下から覗く左手の甲にも走っている。その左手には、もがれたように、小指と薬指が無かった。
「人」と「妖」の双方の血を引くが故か、夜光は儚げな印象とは裏腹に、身体はきわめて丈夫だった。夜光と葵と、共に蓬莱の地を旅するようになってからそれなりに経つが、夜光が道中で体調を崩したことなど一度もない。
それが昨日、このあたりの山道を歩き始めていくらもしないうちに、夜光がふらつき始めた。どうした、少し休むかと言っているうちに、あれよという間に夜光は足元がおぼつかなくなり、立っていられずに座り込んでしまった。
どうやら悪寒と眩暈がひどいようで、慌てて傍の木陰まで抱えて運び、介抱をしていると、そこに一人の僧衣を纏った老爺が通りかかった。
まさか人が来るとも思わず、少しでも楽になるようにと夜光の衣類を緩め、被衣も下ろしていたのだが、その結果、老僧に出会い頭に夜光の「人ならぬ」容姿を見られてしまうことになった。
老僧は、さもあろうがひどく驚いた顔で目を見開き、しばらく凝然と立ち尽くしていた。が、何もふれず、やがて「そちらは、病気かね」と無愛想に声をかけてくると、二人をこの山寺まで導いてくれたのだった。
枕元に座したまま、老僧は無言で夜光の姿を見下ろしていた。無理からぬことではあるのだが、その視線は厳しく、注意深く正体を探っているようで、葵は居心地が悪かった。
この山寺は、どうやら相当に古いもののようだ。元は立派だったのだろう山門は、かなり傷んで黒ずみ、崩れかけて蜘蛛の巣まみれになっていた。石段も参道も、そこらじゅうが苔むしている。鬱蒼と覆い被さってくる樹木の下に埋もれそうな寺そのものも、廃寺ではないのかと思ってしまうほど古色蒼然としていた。
由緒は感じられたが、あまり大きな寺ではない。全体に暗く、土壁にはほうぼうで罅が入り、場所によっては破れかけていた。経年で柱も床板も真っ黒になっている。歩けば軋まない場所はない、といった具合で、それだけに、さっきいつの間にか老僧が背後に立っていたとき、殊更に驚いてしまったのだった。
あたりには蝉の声や、野の獣や野鳥たちの声がしきりに響いているが、人の気配は無い。この寺に来てから、この老僧以外の姿を見かけておらず、声も聞いていなかった。というよりも、この山の近辺に足を踏み入れてから、他に誰の姿も見ていなかった。
老僧の出で立ちは、相当にくたびれた僧衣に、髭は伸び放題、頭も剃髪してはおらず、ざんばらに伸びた髪を後ろで括っている。お世辞にも、身綺麗とは言い難い。僧侶という以上に、世捨て人、といった方がしっくりくる風情ではある。
老僧は動かず、じっと、食い入るように夜光を凝視し続けていた。
「あの……」
沈黙が続き、気詰まりのあまり口を開きかけた葵を制するように、老僧は声を発した。
「この者は、この姿は、生まれつきですか」
もう見られてしまっているので、横たわる夜光は、いつもは頭から纏っている被衣──「月天の羽衣」を身につけていない。
今は夜光の、その類い稀なる紫の瞳は瞼の下に見えないが、枕辺に散る淡い色の髪は、覆うものもなく剥き出しになっていた。
乳白色の夜光の髪は、ただの白髪とは明らかに異なる艶を纏っている。仄かに輝く月光を撚って紡いだような、見る角度や光の当たり方で色合いが微妙に変わるような。えも言われぬ瑞々しく美しい稀なる髪だったが、こんな髪を持った「人間」を、葵はこれまで見たことが無かった。
「はい。生まれついてのものです」
ここまではっきり見られてしまっていては、下手に言い訳じみたことを言うのもかえって余計な疑心を招くだろうと、葵は首肯した。
老僧は首だけを動かし、じろりと胡乱な眼差しを葵に向けた。
「先程ちらりと見えたが。眼の色も、人の子とは違っていたな。おまえもだ。その姿、まっとうな人間とは思えん。──鬼か?」
淡々とした、しかし暗器で斬り付けてくるような問いかけに、葵は姿勢を正した。膝を合わせた姿勢を真っ直ぐに保ち、老僧を見返す。
「人間です。ただ、偶々、こういう姿に生まれつきました」
葵の鮮やかな朱色の髪を、老僧はじっと見つめている。
「ふん」
やがて老僧は目を逸らし、再び夜光を見下ろした。
「人ではなかったとて、自ずから鬼だ物の怪だと名乗るわけもあるまいか。まあ、よろしい。今は、これ以上は問わずにおきます」
反論したところで栓も無いだろうと、葵はそれについては何も答えず、頭を下げた。
「連れの容態が回復したら、すぐにおいとまいたします。ご厄介をおかけして申し訳ない」
「暑気あたりとは思いますが」
老僧のほうもそれに対しては答えず、続けた。
「万が一、このあたりの風土病に罹った可能性もあります。なんにせよ、治りきらぬうちに、うかつに余所に行くものではない」
老僧は億劫そうに立ち上がり、葵を見返った。
「私は明慶とこのあたりでは呼ばれている。そちらは?」
「葵と申します。連れは、夜光と」
「ふむ」
僅かに目を細めるようにし、もう一度夜光をじろりと眺めてから、老僧──明慶は古びた僧衣の裾を返した。
「もとよりここは、夜刀神様のおわす禁足の地。このような忌み地に、跳梁する物の怪がいくらか増えたところで、何が変わるわけでもありますまい。この山寺には私しか居りません。快癒するまで、お好きに滞在されよ。井戸は裏にあります。厨も好きに使えば良い。ただし、私の邪魔になるようなことは、一切して下さいますな」
そう言って、返事も待たずに、明慶は薄暗い廊下に出ていった。
意外な思いでそれを聞いていた葵は、はたと気が付いて、慌てて廊下に追って出た。遠くなってゆく明慶の後ろ姿に、頭を下げる。
「痛み入ります、明慶殿」
明慶はまったく聞こえていないように、昼間でもなお薄暗い廊下の奥へと、姿を消していった。
明慶が歪んだ板敷きを踏むぎしぎしという音が遠くなり、聞こえなくなってしまうと、急に寂れた古寺の薄ら暗さと、人の気配の無さが迫ってきた。
ざあっと、強い風に薙がれた鬱蒼とした木々が、それを煽るように音を立てた。
葵は思わず、破れ窓の外で、束の間の野分にでも遭ったように大きく揺れている青黒い枝々を見返った。
「夜刀神……禁足の地……?」
明慶の残した不吉めいた言葉が、やけに耳の奥に残っていた。だが当然、それに答えるものも無い。
ふいに綾目も分かたぬような心地の中に取り残されたようで、葵は首を振って頭を切り換えた。夜光の元へ戻り、傍らに腰を下ろす。
それからも看病をしながら見守り続けたが、夜光はぴくりとも動かず、まるで死んだように昏々と眠り続けていた。
葵の知る限りでは、夜光がこれほどの不調に見舞われるのは、出会ってから初めてのことだ。
かつて「終の涯」──妖たちの棲む異界の地にいた頃のことを思い出すと、街に薬屋があったことからも、妖でも病を得ることはあるのだろうと思う。
だがそれにしても、倒れ方があまりに急だった。暑気あたり、風土病。明慶はそんなふうにも言っていたが、一方で葵には、何の不調も生じていない。
「禁足地……」
この山に来たのは、深い理由があったのではなく、このあたりの山を越えた先にある街道に出るためだった。
だが何も山を越えずとも、もっと平坦で宿場もある迂回路はあった。この経路を選んだのは夜光だ。しかしそれも、さして珍しいことではない。人間が嫌いで、人に対する警戒心を捨てきれない夜光は、人に遭遇することが少ない道を好むことがよくあった。
だが今思い返すと、夜光は何かしきりに、この山を気にしていたように思う。どちらの順路を進もうかと相談している間、そのときはまだだいぶ視界の先にあったこの山に、夜光は何度も目を向けていた。
半妖である夜光は、目には見えない霊的なものや、現世に染み出してきた幽世の気配に感応して、時々無意識のうちにそれらに誘われることがある。もしかしたら、今回もまた、明慶曰く「夜刀神のおわす禁足地」であるというここへ、そうとは気付かぬうちに喚び込まれてしまったのかもしれない。
因みに「夜刀神」とは、あちらこちらに言い伝えの残る、蛇の象をしていると言われる祟り神だ。とくに常陸国のあたりに、伝承は根強く聞かれる。ここは常陸国からは離れているが、古くより語り継がれる伝説が他の地域に伝播し派生してゆくことは、別段珍しいことでもなかった。
夜刀神、と呼ばれるものについての知識は、葵にはこの程度しか無い。大きな禍をもたらすがゆえに、神と祀り上げて鎮められた性質のもの。放っておけば恐ろしい祟りをなすという蛇神……。
「夜光は、この場所のせいで具合が悪いのか……?」
いっかな高い熱のひかない夜光の傍らで、葵は考えた。
霊的なものに親しい半妖ゆえに、夜光はこの地に宿る何かに喚び込まれたのだ、とすれば。肉体的にはよほど貧弱な「人間」である葵には何も起こらず、夜光にだけ不調が顕われているのも、その「何か」が原因なのではないかと思えてくる。
横たわる夜光の、着物の袖に、葵はふと目をとめた。
夜光の袖の袂の中には、お守りのように、常に「タマフリの鈴」と呼ばれる不思議な鈴が忍ばされている。その鈴の中には玉が入っておらず、普段は何も音が鳴らない。けれど危害を及ぼすものや禍々しいもの、あるいは特に強い力を持つものなどが近くに居ると、警戒を促すように、鳴らないはずの玉音を鳴らす。
タマフリの鈴は、今はとくに何も反応していないようだ。ということは、現状に対して考えられる可能性はふたつある。
ひとつは、鈴が反応するほどのモノが、周囲に居ないということ。もうひとつは、鈴の霊力を抑えつけてしまうほどの「圧倒的に強いモノ」が、ここには存在している、ということだ。
「タマフリの鈴が封じられるほどの、強いもの……」
考えながら何気なく呟いて、ぞわっとした。今この場でそれを考えるなら、候補に挙がるのはそれこそ夜刀神だ。神と呼ばれる類いのものがおいそれと顕われるわけもないし、早計にもほどがある想像だったが、可能性のひとつとして、絶対に無い、とも断言できなかった。
夜刀神。あるいは、そのものではなくとも、それに準ずる何か。
「そもそも、なぜこのあたりは、禁足地と呼ばれているんだろう?」
少なくともここには、明慶が「忌み地」と言い、「夜刀神の禁足地」とされるような、何らかの霊的な曰くがあるのだ。
もっと詳しく明慶に話を聞いてみたかったが、邪魔になることは一切してくれるな、と釘を刺されている。わざわざこちらから訊ねて、あれこれ問いただすのは、明慶にとってはまさに「邪魔」かもしれない。
それに原因が何であれ、夜光が今こうして目を離すことも不安なほどの不調をきたしていることは、違いようのない事実だった。
本当にこの場所自体が、夜光によからぬ作用をもたらしているのならば、ここから離れることが一番良い。しかし、そうだとも言い切れない。
夜光と違って、幽世のものや霊的なものに、葵は疎かった。とある力の強い夜叉から譲り受けた「命の珠」の影響で、多少なりとも幽世の気配を感じ取ることは出来るのだが、それも相性や状況によってむらがある。分かるときは分かるのだが、駄目なときは、てんで駄目だった。
「もどかしいな。俺にもいろいろと感じ取れればいいのに」
思わず溜め息をついた。焦っても仕方が無い、無いものねだりをしていても仕方がない、と分かっていても、夜光が気懸かりで、この先どうなるのか不安だった。
「いや、落ち着け。夜光がこんなときだからこそ、俺がしっかりしないでどうする」
もう一度、今度は嘆息では無く、深呼吸をした。
今はまず夜光の側についていて、出来ることをするしかない。あまりに夜光の様子に変化がなければ、あるいは考えたくはないが悪化していくようなら、医者に診せることも考えなければいけないだろう。人間の医者に、半妖の夜光を診られるのか、というのは、甚だ不明だったが。
眠り続けている夜光の手を、起こさないように、そっと握った。ふれるとその都度驚いてしまうほど、その淑やかな手は熱かった。
可哀相に。見かけによらず気の強い夜光が、立っていられないほど、起きてはいられないほどにつらいのだ。難しいことはよけておいて、一刻も早く、夜光の身体を蝕むものを取り除いてやりたかった。
「熱冷ましが、少しでも効くといいんだけどな……」
意識の戻らない夜光の傍らで看病を続けているうちに、やがて陽が沈み、夜が更けていった。
*
──熱い。うだるように、なんて熱いんだろう。
自分が自分であるのかもよく分からないまま、もがく気力も無く、ねっとりと纏わり付いてくるそれの中を漂う。
そうするうちに、頭も身体も、妙にふわふわとしてきた。快適とは到底言えないが、不快ではない、程度の感覚に落ち着いてゆく。
不思議な感じだ。自分は今、起きているのか、眠っているのか。それもよく分からない。けれどその曖昧さが、次第に心地良くすらなってゆく。まるで何かに抱き込まれているように、ふわふわ、ゆらゆらと揺れている。そう、ゆらゆら揺れる……まるで揺り籠のようだ。
──ああ。それにしても、あつい……。