あのときいったい自分が何をしたかったのか、それは今でも分からない。
自分のすべてを奪い、すべての価値観を破壊し、すべての矜持を引き裂いた彼に復讐がしたかったのか。
すべてを奪われて尚残っていた、ひとかけらの心さえ奪われることに、震えるほどの堪え難い恐怖と、絶望と怒りを感じたのか。
ただ分かるのは、あのとき彼が一言でも詫びていたら。かつて彼が自分にしたことを悔いてくれたなら。自分はナイフを取らず、引き金も引きはしなかったということ。
死して尚、否、死したことでより無慈悲に泰然と、彼は自分の上に君臨し続けている。
あのとき彼の頭を撃ち砕いた銃弾は、自分自身の最後の良心もまた撃ち砕いた。
もう自分を止められるものは何もない。ただもう、糸に引かれるように、底の見えない暗闇に堕ちて行くしかない。
interlogue
