妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

六花咲きて巡り来る

禍夢 (十)

連日の大きな地震に驚いて各々の家から飛び出してきた里の人々は、それに続いた光景に揃って肝を潰した。 赤い満月が不気味に照らし、湖が海のように波立った中を、神島が崩れながら沈んでゆく。沈んでいったあとに巨大な渦巻きが発生し、さらには湖の水とい...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (九)

体勢はやや低め、いつでも武器を抜けるようにして身構える。 これまでの状況や、今目の前に顕われた蛇神の様子からして、これはどうやら死の穢れ、死にまつわる様々な陰と負の因子の塊だ。死穢、腐敗、それから死に対する拒絶や恐怖や怒り。転じて、生あるも...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (八)

寝具に横たわっていた小夜香が、何の前触れもなく、ふっと眼をさました。「あら、小夜香様。お目覚めですか」 たまたま様子を見に来ていた亜矢が、それに声をかける。 小夜香はそれに見向きもせず、眼を見開いて虚空を見回した。「……秋人兄様?」 ぽつり...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (七)

「そういうことか……」 読み取った洪水のような情報と、長いこと限度を超えて集中し続けたせいで、頭がふらついた。事態を把握したことで、一瞬気が緩む。ふっと、そのまま意識が落ちそうになる。 身を支えることが出来なくなり、そのまま棒のように横ざま...
六花咲きて巡り来る

禍夢 (六)

颯介が階段をまろぶように駆け上がって、逃げてゆく。それを秋人は一瞬追おうとしたが、この場の状況のあまりの異常さに、そうすることが出来なかった。 ぐるりと室内を見渡す。壁際に、赤黒い炎をまとったものが落ちている。あれは、この祠におさめられてい...