妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

六花咲きて巡り来る

幕間 ─ よみがえり ─

「…………っ!、あっ……!」 自分の胸元を掻きむしるようにしながら、夜光は跳ね起きていた。 地獄の炎に炙られているように、全身が熱い。肌がじくじくと焼け爛れてゆくような、恐ろしい熱さと苦痛に、悲鳴を上げたくても上げられない。 その様子に気が...
六花咲きて巡り来る

曲夢 (十五)

「っっっはーーーーー。つっかれたああぁーーー」 戻って来た社殿の控えの間にて。ぐん、と全身を思い切り伸ばして、小夜香は爪先まで大きく伸びをした。亜矢が持ってきてくれた水を一気にあおり、ぷはーっと息を吐く。「うっまあーーい。亜矢ぁ、水がうまい...
六花咲きて巡り来る

曲夢 (十四)

金色の大きな満月が、澄んだ濃紺の夜空に昇っている。夜の王に付き従うよう、見渡す限りの晴れた夜空に、降るような星々がきららかにまたたいている。 神楽殿の袖、他の誰からも見えない場所に、白布で囲われたささやかな斎垣(いがき)が設置されている。小...
六花咲きて巡り来る

曲夢 (十三)

「ああ、ほら小夜香様。まだ動いちゃなりませんってば」「うー。もう疲れたよぉ。首痛いよー。足も痛いよー」「もうちょっとの辛抱です。今せっかくちゃんとしてるところなんですから、あともう少し頑張ってください」 慎ましく整えられた社殿の一角。龍神へ...
六花咲きて巡り来る

曲夢 (十二)

秋人は背筋を伸ばし、切り換えるように顎を引く。「それで、小夜香。──とりあえず、いろいろ聞いたけれど」「はい」 秋人にならって、小夜香も姿勢を正す。そこにいる秋人は、もう少しも取り乱したところもなく、落ち着いた居住まいを取り戻していた。「あ...