妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

六花咲きて巡り来る

六花咲きて巡り来る (一)

──只白い世界にとけてゆきそうな中を、頼りない浮舟のように、朦朧と漂っていた。降りしきる白い花のような雪の中にいる筈なのに、けれどどうしてか、少しも寒くはない。 「……光。夜光……」  と、自分を呼ぶ声と、肩を揺する感覚。ふっと、夜光は意識...
六花咲きて巡り来る

六花咲きて巡り来る (序)

音も、風景も。何もかもが、白の中に吸い込まれるようだった。  只、静寂。白い世界の他には何も見えない。声も足音も、ちょっとした息遣いさえ、広がる白さの中にとけてゆく。  ──ああ。雪だ。  見上げると、音も無く舞い落ちてくる綿毛のようなもの...
八重山振りの君

八重山振りの君 (八) -完結-

そっと小屋に戻ると、夜光は幸い目を覚ました様子はなく、穏やかな寝息を立てて眠り続けていた。夜光が気が付いて心配してはいないかと、それが気懸かりだったので、葵はほっとした。  眠っている夜光の顔を見たことで、葵も糸が完全に切れた。ひどい疲労感...
八重山振りの君

八重山振りの君 (七)

瞬間。  ぱあん、と、音ならぬ音が鼓膜を叩いたようだった。濃霧に閉ざされていたようだった視界が、瞬時にして晴れ渡る。  涼みを帯びた夜風が、心地良く頬に吹き付けた。気が付けば葵は、すっかり息を切らしながら、抜き身の太刀を手に、静かな夜道に立...
八重山振りの君

八重山振りの君 (六)

外に出てみると、村の外に続く道のほうに、金色に光る何かが見えた。大きなものではない。葵の膝丈まであるかないか、というくらいの、まるで小型の獣か、さもなければ幼児くらいの大きさだ。  葵が気が付いたことを察したように、すっとそれは遠ざかる。少...