妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 遣らずの里 (二) 峠近くの小さな滝のそばで休んでから、ふたりは山路を下り始めた。 山麓には、さしあたっての目的地である人里がある。 だがそこに到るよりも先に、二人はまたしても山路で妖に襲われた。木立の間から急に飛び出してきたから、はっきりと視認できたわけ... 2021.02.05 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編遣らずの里
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 遣らずの里 (一) 葵(あおい)の上背ほどの高さの小さな滝の水は、この間までは蝉の声が聞こえていたというのに、もう痛いほど冷たかった。 ささやかな滝壺は澄み切って、そこに棲む小さな生き物たちの銀色の背を、波紋の下に覗かせている。 右の前腕に走った引っ掻き傷... 2021.01.26 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編遣らずの里