妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 誰そ彼の道往き (後) 眠り込んだままの少年の髪を、夜光はずっと撫でてやっていた。 次第に陽は傾き、東の空が透明な青から藍にうつろう。かわりに、西の空は滲むような朱を増してゆく。 鴉の数も増え、ぎゃあぎゃあと鳴き交わす声が煩かった。何羽か近くまで寄ってきたが、... 2023.09.21 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編誰そ彼の道往き
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 誰そ彼の道往き (前) 「坊や。そこの坊や」 秋晴れの空の下。見渡す限りの焼け野原。 道なきそこを、動かない片足を引きずりながらよたよたと歩いていた弥一(やいち)は、ふいに背後から聞こえてきた声に立ち止まった。 あたり一面には、焼けた田畑と森と原っぱ。それに... 2023.09.21 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編誰そ彼の道往き