天の記憶 番外編 天の記憶 とろりと潤んだ夜気に、仄かな花の薫が漂う。 長おさは香匙を手にしたまま、ふと目を上げた。半蔀にかかる桃の枝から、ひらりひらりと花びらが舞い降りてくる。そこにちょうど掛かっていた朧月に金の瞳を細め、はんなりと微笑を零した。 「ああ……良い風... 2020.08.08 天の記憶 番外編