メビウスの蛇 二章 氷滴 (2) 「そこに座れ」 フィロネルの側までいやいや足を運ぶと、ユアンはそこに置かれていた一人掛けのソファを示された。ソファは深く腰掛けられるゆったりしたもので、張られた緋色の布地は生き血のように目に鮮やかだった。 何をされるのか、フィロネルが何... 2020.08.08 メビウスの蛇
メビウスの蛇 二章 氷滴 (1) 灼かれるように熱い、と思った。 足許が妙に頼りなく、踏んでも踏んでも崩れてゆく砂の上を往くようだ。 何もかもが妙に曖昧な中、ユアンは炎の中を彷徨っていた。 いつから自分がここに居たのかも分からない。ただ、強い焦燥にかられて炎の中を右往... 2020.08.08 メビウスの蛇
メビウスの蛇 一章 紅の相克 (5) 乳首の片方と股間とに遠慮のないねっとりとした愛撫が続くうち、次第に少年の顎が上がって、その身が震える頻度が高くなってきた。いつしかその全身が体温の上昇を示して淡く色付き、明らかに脂汗とは異なる珠のような雫が肌の上に浮かんでいた。 「う……っ... 2020.08.08 メビウスの蛇
メビウスの蛇 一章 紅の相克 (4) 切れ味の良い短剣は、柔らかな絹とレースで彩られたドレスを簡単に切り裂いてゆく。 突然のことに、ユアンは何が起きたのか分からないという顔をしていた。驚愕に瞠られた藍色の瞳が、己の胴の上に馬乗りになったフィロネルと、無惨に切り裂かれたドレスに... 2020.08.08 メビウスの蛇
メビウスの蛇 一章 紅の相克 (3) 「貴様……」 地獄の底から響いてくるような恨みと憤怒を滲ませた声音を、少年が低く発した。 鎖を緩められているとはいえ拘束され、腕は自らの首にも届かない程度にしか上がらず、少年は身を起こすこともかなわない。ウィッグを外され化粧を落とされた... 2020.08.08 メビウスの蛇