メビウスの蛇

メビウスの蛇

二章 氷滴 (2)

「そこに座れ」  フィロネルの側までいやいや足を運ぶと、ユアンはそこに置かれていた一人掛けのソファを示された。ソファは深く腰掛けられるゆったりしたもので、張られた緋色の布地は生き血のように目に鮮やかだった。  何をされるのか、フィロネルが何...
メビウスの蛇

二章 氷滴 (1)

灼かれるように熱い、と思った。  足許が妙に頼りなく、踏んでも踏んでも崩れてゆく砂の上を往くようだ。  何もかもが妙に曖昧な中、ユアンは炎の中を彷徨っていた。  いつから自分がここに居たのかも分からない。ただ、強い焦燥にかられて炎の中を右往...
メビウスの蛇

一章 紅の相克 (5)

乳首の片方と股間とに遠慮のないねっとりとした愛撫が続くうち、次第に少年の顎が上がって、その身が震える頻度が高くなってきた。いつしかその全身が体温の上昇を示して淡く色付き、明らかに脂汗とは異なる珠のような雫が肌の上に浮かんでいた。 「う……っ...
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一章 紅の相克 (4)

切れ味の良い短剣は、柔らかな絹とレースで彩られたドレスを簡単に切り裂いてゆく。  突然のことに、ユアンは何が起きたのか分からないという顔をしていた。驚愕に瞠られた藍色の瞳が、己の胴の上に馬乗りになったフィロネルと、無惨に切り裂かれたドレスに...
メビウスの蛇

一章 紅の相克 (3)

「貴様……」  地獄の底から響いてくるような恨みと憤怒を滲ませた声音を、少年が低く発した。  鎖を緩められているとはいえ拘束され、腕は自らの首にも届かない程度にしか上がらず、少年は身を起こすこともかなわない。ウィッグを外され化粧を落とされた...