妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 氷雨に訪う (五) -完結- 「葵……」 夜光が呼びかけると、首を上げて空を仰いだ葵が、ふう、とひとつ息を吐いた。ゆっくりと立ち上がり、夜光を振り返る。 夜光と視線を重ねたそのときには、葵はもう、いつもの柔らかな表情に戻っていた。 「大丈夫か、夜光」 少し離れた場... 2022.01.15 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編氷雨に訪う
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 氷雨に訪う (四) 「あのとき私は、間違い無く、あなたの想い人を利用して命を奪いました。……あの御仁はマレビトでしたから。急に所在が知れなくなっても、そう騒ぐ者もいないだろうと……思ったのです」 冷たい雨の中に座り込んだまま、懺悔するように夜光は言った。 ... 2022.01.15 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編氷雨に訪う
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 氷雨に訪う (三) 切り拓かれていない森は、鬱蒼と深かった。まして夜の闇の中、さらに雨で視界が悪い。 深い闇を抱く樹木の間は、どこもかしこも同じに見える。細い獣道は通っているが、ごつごつとした木の根が足元を這っていて、進む方角よりも足場に注意しなければならな... 2022.01.14 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編氷雨に訪う
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 氷雨に訪う (二) それからしばらく経ち、多少雨足は弱まったが、一向に降り止む気配は無かった。 今日は早々から悪天候に見舞われた中を歩いてきた疲れもあり、単調な雨音を聞いているうちに、夜光と葵はいつのまにか眠ってしまっていた。 どれくらいそうしていたのだろ... 2022.01.13 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編氷雨に訪う
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編 氷雨に訪う (一) 人と妖。私達は確かに、生まれながらに種として異なっている。だけれど誰かを愛し、欲する心は、人であろうと妖であろうと、そう違(たが)わぬはずだ。だからどうか、私を信じてほしい。私と一緒になってくれないだろうか──蓮華(れんか)。 そういって... 2022.01.08 妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編氷雨に訪う