妖は宵闇に夢を見つ 三章 宵闇に夢を見つ (十三) 見つめ合うことしばし。 全身を強張らせた夜光が、やがてゆっくりと立ち上がった。ひとつ大きく息を吸い、夜光は葵を正面から睨み付け、口を開いた。 「何の用ですか」 覚悟はしていたが、夜光からそんな目で見られることは、それだけで気持ちが挫けて... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ
妖は宵闇に夢を見つ 三章 宵闇に夢を見つ (十二) 夜光は虚ノ浜にいる。 そう告げて長が去った後、葵は衣装箱に用意されていた長着を身につけ、流れるままになっていた長い髪を手早く括った。長から手渡された八咫烏の羽を、大事に懐にしまい込む。 「虚ノ浜か……」 この最玉楼は、終の涯の街のほぼ中... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ
妖は宵闇に夢を見つ 三章 宵闇に夢を見つ (十一) ざぁん、と、真っ直ぐな碧あおい水平線の果てから、穏やかな波が浜辺に打ち寄せる。 蓬莱と呼ばれる異界へと繋がる海。憎い人間たちの国へと繋がる海。 夜明け頃に最玉楼をふらふらと出て、あてもなく彷徨っているうちに、気がつけば夜光は「虚ノ浜」と... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ
妖は宵闇に夢を見つ 三章 宵闇に夢を見つ (十) 咄嗟に伸ばした手が、しかしやはり傷だらけの小さな身体を突き抜けた。 「やめろ。やめてくれ」 悪鬼のような人間達に懇願しながら、その小さな身体の前に、葵は身体を割り込ませる。だが何もかもが素通りするばかりで、どうすることも出来なかった。いつ... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ
妖は宵闇に夢を見つ 三章 宵闇に夢を見つ (九) 「私達の世界に古いにしえより伝わる秘宝のひとつに、冥魂珠めいこんじゅというものがあります」 長は煙管盆を傍らに置き直すと、再び長煙管を取り上げながら口を切った。 「いつ誰が造ったものなのかは分かりません。昔は百粒あったそうなのですが、今は... 2020.08.08 妖は宵闇に夢を見つ