遣らずの里

妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (七)

山姿(やましな)神社の祭殿が荒らされ、宮司が殺害されたことで、耶麻姿の里は大騒ぎになった。  各々の収穫作業は続けられたが、すっかり収穫祭どころではなくなり、里のほうぼうで造り途中だった祭り飾りや道具類が放っておかれるままになった。  御社...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (六)

山近くの畑一帯が何者かにひどく荒されてしまった、という一件については、さもありなん、里で大騒ぎになった。  幸い半分以上の畑では収穫を終えていたが、残りの畑は葉の一枚、茎の一本まで無惨に荒されており、これから実るぶんもあわせて、到底まともな...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (五)

夜光と葵が耶麻姿家の世話になり始めて、数日が過ぎた。  最初のうちは本当に素顔を晒しても大丈夫なのかと不安だったが、少なくとも屋敷の者たちは、夜光を見ても避けたり恐れるようなことはしなかった。  ただの食客でいるのも気兼ねするので、旅の疲れ...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (四)

あんぐりと口を開けたままの天休斎の手から、ぱたり、と扇子が落ちた。と、夜光を凝視したまま、やおら葵のほうに尻でいざりながら近づき、その肩口をつかむ。かと思うと、興奮した面持ちで、葵を揺さぶりながらその背中をばんばんと叩き出した。 「おい……...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (三)

目抜き通りを真っ直ぐにいった先に、その男──耶麻姿天休斎、すなわちこのあたりを治める総領である人物の屋敷はあった。  先刻の話。  どこから来たのか、と往来で訊ねられた二人は、半ば人垣に囲まれたその場ではっきり答えるわけにもいかず、ひとまず...