妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

花衣に眠る (六)

障子を透かして、青白い月光が滲む中。ふ、と夜光が目を覚まして横を見ると、隣の寝床には誰の姿もなかった。「……葵?」 ついさっきまでそこに葵がいたことを示すように、寝具は若干寝乱れている。ふれてみると、体温も少し残っていた。 月の位置からして...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

花衣に眠る (五)

奥座敷とは続き間になった書斎からも、庭で咲いている桜が見えた。 本来は奥座敷との間を板戸で仕切るのだろうが、住人が源之助一人のせいか、それは取り払われている。 源之助が満たしてくれた杯を持ったまま、葵はぼんやりと、夜の中に佇む桜を眺めていた...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

花衣に眠る (四)

五年という歳月によって隔てられ、それだからこそ尚更に、葵と源之助の間で話は尽きなかった。 やがて次第に陽は西に傾き、源之助の「しばらくここを宿にして下さい」というすすめを、二人は受けることにした。「主たる御方にそんなことはさせられません」と...
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花衣に眠る (三)

露店の主──源爺と葵に呼ばれた老爺は、ひとしきり号泣すると、こうしてはいられないとばかりに露店を片付け、二人を自身が住まう家へと案内した。 夜光には葵と老爺との関係は分からなかったが、葵を「若」と呼び、葵もまた「源爺」と呼んだそこに、察する...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

花衣に眠る (二)

この人里は、街道沿いから少し入った先の、連なる山嶺の裾野にあった。山を下ってくる豊かな清流から水を引き、あたりには広々とした農耕地が広がっている。 なんでも昔、たいそう桜好きな領主がいたそうで、里の随所に桜が植えられている。あの高台の御堂を...