妖は宵闇に夢を見つ

夜明けまで 後日談

夜明けまで (十九)

「よし。話は丸くおさまったようだな」  話が一段落したところで、それまで黙って様子を見守っていた槐が立ち上がった。若干人の悪く見える笑みを、にやにやと浮かべている。 「空の奴がまだ拗ねているようなら、俺が一肌脱がねばなるまいと思っていたが。...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (十八)

正午になる少し前。「私の離れに来るように」との、長からの言付けがあった。  勿体つけたところのない長は、普段は自ら気軽に動き回り、用事があるときは自分から姿を現すことが多い。ゆえに「呼び出される」というのは珍しく、夜光と葵は少し緊張して、長...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (十七)

葵が目を覚ます前に、夜光はそっと寝床を抜け出した。  最玉楼では、常に湯殿が開いている。夜光は早朝のうちに湯浴みをし、身繕いを済ませた。  葵に似合いそうな、爽やかな薄藍の長着一揃いを借りてきて、まだ目覚める様子のないその枕元に置いておく。...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (十六)

同じ日の夜。ほぼ満月に近い、だがあとは細ってゆくばかりの十六夜が、天頂を間もなく通り過ぎる頃合。  長の住まう小御殿、月明かりに白い蕾が映える芙蓉の群れが傍らに広がる広廂にて。杯を手に、槐がくつくつと笑っていた。 「しかし、おまえも存外に子...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (十五)

「あ、あお……葵……」  熱く甘い口付けの継ぎ間に、夜光は何度も葵の名を呼んだ。そのうち深く唇をふさがれると、零れる涙をそのままに、夜光は葵の身体をただ強く抱き締めた。  半妖の夜光と人間の葵とでは、どうしても夜光の方が寿命が長い。避けよう...