妖は宵闇に夢を見つ

妖は宵闇に夢を見つ

三章 宵闇に夢を見つ (十三)

見つめ合うことしばし。  全身を強張らせた夜光が、やがてゆっくりと立ち上がった。ひとつ大きく息を吸い、夜光は葵を正面から睨み付け、口を開いた。 「何の用ですか」  覚悟はしていたが、夜光からそんな目で見られることは、それだけで気持ちが挫けて...
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三章 宵闇に夢を見つ (十二)

夜光は虚ノ浜にいる。  そう告げて長が去った後、葵は衣装箱に用意されていた長着を身につけ、流れるままになっていた長い髪を手早く括った。長から手渡された八咫烏の羽を、大事に懐にしまい込む。 「虚ノ浜か……」  この最玉楼は、終の涯の街のほぼ中...
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三章 宵闇に夢を見つ (十一)

ざぁん、と、真っ直ぐな碧あおい水平線の果てから、穏やかな波が浜辺に打ち寄せる。  蓬莱と呼ばれる異界へと繋がる海。憎い人間たちの国へと繋がる海。  夜明け頃に最玉楼をふらふらと出て、あてもなく彷徨っているうちに、気がつけば夜光は「虚ノ浜」と...
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三章 宵闇に夢を見つ (十)

咄嗟に伸ばした手が、しかしやはり傷だらけの小さな身体を突き抜けた。 「やめろ。やめてくれ」  悪鬼のような人間達に懇願しながら、その小さな身体の前に、葵は身体を割り込ませる。だが何もかもが素通りするばかりで、どうすることも出来なかった。いつ...
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三章 宵闇に夢を見つ (九)

「私達の世界に古いにしえより伝わる秘宝のひとつに、冥魂珠めいこんじゅというものがあります」  長は煙管盆を傍らに置き直すと、再び長煙管を取り上げながら口を切った。 「いつ誰が造ったものなのかは分かりません。昔は百粒あったそうなのですが、今は...