夜明けまで 後日談 夜明けまで (六) 白い、白い中にいる。 ぼんやりと漂うように、夜光はその白さに身をゆだねる。まるで、心地良い湯にでもつかっているようだ。重く疲弊した手脚に、瞼に、穏やかな暖かさがじんわりと沁み込んでくる。 ……心地良いはずなのに、どうしてか、哀しい。忘れ... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (五) 終の涯の空は、うっすらと虹色掛かったような独特の色合いを帯びている。 淡く透明に明けそめてゆく黎明の頃合は、金色と薄い空色と虹の光芒が折り重なり、極楽浄土の空もかくやというほど、とりわけ美しい。 ゆるい風が金色の東の雲をたなびかせ、様々... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (四) その日の昼前に、夜光は長の小御殿に呼び出された。 明るく風通しの良いこの小御殿は、夜光にとって幼い日々の思い出が詰まった特別な場所だ。幼い夜光は、この最玉楼に引き取られてから、長と共にずっとこの御殿で暮らしていた。 広々と天井の高い、長... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (三) 「沙霧は、息災か?」 空気を変えるように、槐が杯を取り直しながら言った。問うてから、気が付いたように言い直した。 「ああ、違うか。今は夜光と呼ばれているんだったな」 「おまえがあの子を呼ぶ分には、沙霧で良いかと思いますよ」 「いや。あれは... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (二) 記憶にある姿とは、大きく異なっている。だが背格好や声、穢れの中に垣間見える妖気は、間違いなく「槐」という名を持つ旧友のものだった。長を「空」という勝手な綽名で呼ぶ者もまた、槐の他には誰も居ない。 さすがに少々驚いたものの、それを認めると長... 2020.08.08 夜明けまで 後日談