妖は宵闇に夢を見つ

夜明けまで 後日談

夜明けまで (九)

槐は夜光を抱え、再び界渡りをし、蓬莱から終の涯へと戻った。  最玉楼に着いたところで、夜光が目を覚ました。抱きかかえられたまま、最初はぼんやりと視線を彷徨わせていたが、はっとしたように目を瞠みはる。槐を凝視し、夜光はたちまちその血の気の失せ...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (八)

槐の調合した眠り薬は、よく効いた。  あの哀しい夢が再び訪れるようにはなったが、一口含んだだけで睡魔が訪れ、朝まで目覚めない。夢すら見ずに眠ることも増えた。日中の間、槐にあれやこれやと引っ張りまわされている疲れもあるのだろう。  一方で槐は...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (七)

体調の良いときは、槐はとにかくじっとしていなかった。  離れた場所に一瞬で渡っていったり、風そのものに変化へんげして移動できる槐は、気が付けば姿を消していることが多い。ほうぼうを好きにうろつきまわったり、どこぞで遊んできているようだ。かなり...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (六)

白い、白い中にいる。  ぼんやりと漂うように、夜光はその白さに身をゆだねる。まるで、心地良い湯にでもつかっているようだ。重く疲弊した手脚に、瞼に、穏やかな暖かさがじんわりと沁み込んでくる。  ……心地良いはずなのに、どうしてか、哀しい。忘れ...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (五)

終の涯の空は、うっすらと虹色掛かったような独特の色合いを帯びている。  淡く透明に明けそめてゆく黎明の頃合は、金色と薄い空色と虹の光芒が折り重なり、極楽浄土の空もかくやというほど、とりわけ美しい。  ゆるい風が金色の東の雲をたなびかせ、様々...