妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (十三)

懐中に常に挿し込んである葵の匕首を取り出し、しゅるりと袋の蓋を括っている紐を解く。「天休斎様。私があの蜘蛛の上に登ったら、演奏を止めて逃げてください」 うずくまっている闇蜘蛛に目をやり、夜光は言う。天休斎は何か言いたげに目を白黒させていたが...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (十二)

やっと里の入り口が見えてきた頃には、もうだいぶ夕暮れも深まっていた。西の空だけが茜に染まり、赤紫の入り交じる頭上には、ひときわ明るい星々が煌めき出している。東の空は、すっかり深い藍色に変わっていた。 息を切らして、夜光はいったんそこで足を止...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (十一)

里を見回ってくるという天休斎とはそこで別れ、葵は屋敷に帰った。「夜光?」 部屋に戻り、声をかけてみたが、夜光の返事も姿も無かった。 夜光が使うといっていた隣の部屋に続く襖は、開かれている。そちらにも夜光はおらず、被衣は無かったが荷物は置かれ...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (十)

「はいよ。ちょいと御免なすって。邪魔するよ」 天休斎は人の輪を掻き分け、すたすたとその場の中心になっている葵と柚太のもとへ歩み寄ってくる。「天休斎さま」 見上げた柚太に、天休斎はにこりと笑いかけた。「話は聞かせてもらったよ。柚太、偉かったね...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (九)

今の夜光を追っていっても、おそらくまともな会話にはならない。 明日の勤めもあったし、何よりひどく疲れていた。重い身体を引きずるように寝床につくと、葵は無理やりに目を瞑った。 疲れているのに、頭の芯が冴えてしまって寝付けない。それでもようやく...