夜明けまで 後日談

夜明けまで 後日談

夜明けまで (十一)

そこは最玉楼の本館からは少し離れた、長の離れと同様、美しい遣り水と庭園に囲われた一棟だった。  特別な貴賓を迎えるための紫水殿は、赤紫の夕暮れに染まる空の下、幾つもの釣り燈籠に照らされている。澄んだ遣り水に無数の燈あかりが映り込み、建物全体...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (十)

それから長は、夜光を自分の住まう小御殿に招いた。  夜光はこの最玉楼にやってきたばかりの頃は、長と共にこの小御殿で暮らしていた。長は夜光に、かつて夜光が使っていた部屋をあてがい、しばらくこちらで共に暮らすように、と申しつけた。  長としては...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (九)

槐は夜光を抱え、再び界渡りをし、蓬莱から終の涯へと戻った。  最玉楼に着いたところで、夜光が目を覚ました。抱きかかえられたまま、最初はぼんやりと視線を彷徨わせていたが、はっとしたように目を瞠みはる。槐を凝視し、夜光はたちまちその血の気の失せ...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (八)

槐の調合した眠り薬は、よく効いた。  あの哀しい夢が再び訪れるようにはなったが、一口含んだだけで睡魔が訪れ、朝まで目覚めない。夢すら見ずに眠ることも増えた。日中の間、槐にあれやこれやと引っ張りまわされている疲れもあるのだろう。  一方で槐は...
夜明けまで 後日談

夜明けまで (七)

体調の良いときは、槐はとにかくじっとしていなかった。  離れた場所に一瞬で渡っていったり、風そのものに変化へんげして移動できる槐は、気が付けば姿を消していることが多い。ほうぼうを好きにうろつきまわったり、どこぞで遊んできているようだ。かなり...