夜明けまで 後日談 夜明けまで (十一) そこは最玉楼の本館からは少し離れた、長の離れと同様、美しい遣り水と庭園に囲われた一棟だった。 特別な貴賓を迎えるための紫水殿は、赤紫の夕暮れに染まる空の下、幾つもの釣り燈籠に照らされている。澄んだ遣り水に無数の燈あかりが映り込み、建物全体... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (十) それから長は、夜光を自分の住まう小御殿に招いた。 夜光はこの最玉楼にやってきたばかりの頃は、長と共にこの小御殿で暮らしていた。長は夜光に、かつて夜光が使っていた部屋をあてがい、しばらくこちらで共に暮らすように、と申しつけた。 長としては... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (九) 槐は夜光を抱え、再び界渡りをし、蓬莱から終の涯へと戻った。 最玉楼に着いたところで、夜光が目を覚ました。抱きかかえられたまま、最初はぼんやりと視線を彷徨わせていたが、はっとしたように目を瞠みはる。槐を凝視し、夜光はたちまちその血の気の失せ... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (八) 槐の調合した眠り薬は、よく効いた。 あの哀しい夢が再び訪れるようにはなったが、一口含んだだけで睡魔が訪れ、朝まで目覚めない。夢すら見ずに眠ることも増えた。日中の間、槐にあれやこれやと引っ張りまわされている疲れもあるのだろう。 一方で槐は... 2020.08.08 夜明けまで 後日談
夜明けまで 後日談 夜明けまで (七) 体調の良いときは、槐はとにかくじっとしていなかった。 離れた場所に一瞬で渡っていったり、風そのものに変化へんげして移動できる槐は、気が付けば姿を消していることが多い。ほうぼうを好きにうろつきまわったり、どこぞで遊んできているようだ。かなり... 2020.08.08 夜明けまで 後日談