cats and dogs

世界中の誰よりも spin-off

世界中の誰よりも

ちょっとした用事を片付けて部屋に戻り、ドアを開けたところで、サクは数秒棒立ちになった。 「およ」  と、大きな窓から光の差し込む明るい部屋の奥から、レンが青い目をぱちぱちさせる。その腕に抱き寄せられているのは、出るところが出て引っ込むところ...
空へ spin-off

空へ

暗い非常階段を昇り切った先にある錆び付いた重い鉄のドアを、身体ごとで押し開けてゆく。隙間が広くなるにつれて、陰鬱な暗さの中に切り込むように、真っ直ぐな真昼の明るさが入り込んでくる。  凍えるような冬の冷気に晒された鉄のドアは冷え切っている。...
cats and dogs

「cats and dogs」 あとがき

以上をもちまして、「cats and dogs」本編は完結となります。 このお話で書きたかったことは色々ありますが、中でも特にこだわったのが「因果応報」「被害者であろうと救われない惨さ」でした。 最後はあのような形で締め括られるため、読了下...
cats and dogs

終焉のパンドラ

サクが死んでから一週間経った頃。レンはサクの家を訪ねた。正確には、俊に招待された。  それはつまり、廃都を出てから一週間が過ぎた、ということでもあった。  あの後レンは、迎えに来ていた俊と落ち合い、金さえ出せばなんでも焼いてくれるという火葬...
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蓮の章 第八のパンドラ(4)

サクはぼろぼろの車に押し込められた。  走り出した車の中にいるうちに、拳銃を奪われ、後ろ手に手首を荒縄で縛り上げられた。まだ生傷の深いそこを容赦なく締め上げる荒縄の感触に、サクは猿轡の奥でくぐもった呻きを上げた。  自由を奪われ、声を奪われ...