L.D. 一週間後に咲く花へ (6) -完結- 瞼の裏にうっすらと明るさを感じ、アゲハは目を覚ました。 「ん……」 引かれたカーテンの隙間から、爽やかな朝陽がリビングに差し込んでいる。いつもと変わらない、穏やかな朝。そのはずが、すぐ傍らに違和感があった。 寝ぼけまなこで何気なく横を見... 2020.08.08 L.D.一週間後に咲く花へ
L.D. 一週間後に咲く花へ (5) 手が不自由なアゲハのかわりに、慧生は夕食の後片付けもしてくれた。 きちんと片付いたキッチン全体を見て、この人は本来自分のことは自分でできる人なんだなぁ、とアゲハは思う。 アゲハがこの家に来たばかりの頃は、家中が荒れ果ててひどいありさまだ... 2020.08.08 L.D.一週間後に咲く花へ
L.D. 一週間後に咲く花へ (4) 「ただいま戻りました、慧生さん」 アゲハが帰宅すると、慧生はリビングのソファから、広げた何かの本を読みながら「ん、おかえり」と返事をした。 何かとデジタル化が著しい世の中、読書もデジタルとアナログを選べるが、慧生は新聞や雑誌、さっと読み... 2020.08.08 L.D.一週間後に咲く花へ
L.D. 一週間後に咲く花へ (3) 「……あれ?」 マンションのエントランスから少し離れた植え込みのあたりに、男性とおぼしき人影が二人立っているのが見える。出て行くときには目に付かなかったから、アゲハが外出している間にここに来たのだろう。 マンションに向かって歩くと必然的... 2020.08.08 L.D.一週間後に咲く花へ
L.D. 一週間後に咲く花へ (2) 慧生はどうにか苦心の末に入稿を終えると気が抜けたようで、空気が目に見えて和らいだ。 仕事を終えて気が緩んだ今夜なら、いつもよりもうちょっと食べてくれるかもしれない。今日は鶏肉があるから、バジルをきかせた塩焼きにして、豆腐にルッコラとトマト... 2020.08.08 L.D.一週間後に咲く花へ