メビウスの蛇

メビウスの蛇

「メビウスの蛇」あとがき

「メビウスの蛇」本編は、これで完結になります。ちょっと小難しいような「国と国」みたいな事も絡むこのお話、どこまでそういう要素を出していいのか微妙に苦心しました。私個人の好みで言うと、歴史モノ、戦記モノといった系統は本来大好物で、ガチガチにそ...
メビウスの蛇

五章 星の流れる先 (5) -完結-

 時ならぬお祭り騒ぎに、屋敷の住人達は皆そわそわと浮き足立っていた。気の良いエルティーダ卿は召使い達にも交代で暇を取るように言い、夫人や幼い娘達と連れ立って、連日あちらこちらに出かけてゆく。中には職務としての、宮廷への出仕もあるようだった。...
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五章 星の流れる先 (4)

 その冬は、寒さがひどく身に染みた。 街から街へと伝って、ひたすら南にユアンは移動した。南に下るほど晴れ間が増え寒さは多少はやわらいだが、ただでさえもっと温暖なファリアス育ちのユアンには、それでもとても野宿する気にはなれなかった。 幸い皇宮...
メビウスの蛇

五章 星の流れる先 (3)

 フィロネルは動揺し赤面しているユアンを見、また小さく笑った。あたりは暗いから、肌色の変化を見て取られたのかは分からなかったが。 フィロネルはユアンの腕を引いて、その赤みを増した頬に軽く口付けると、仰向けだった身体をうつ伏せにさせた。衣服を...
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五章 星の流れる先 (2)

 まったく他意のない、当然のことを語っているだけというように気負いすらもないフィロネルの様子に、ユアンはしばらく言葉が出なかった。フィロネルの言うことを信じるならば、それはあまりにも単純明快な解ではあった。たとえ予想外にすぎて、頭が理解に追...