妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (九)

今の夜光を追っていっても、おそらくまともな会話にはならない。  明日の勤めもあったし、何よりひどく疲れていた。重い身体を引きずるように寝床につくと、葵は無理やりに目を瞑った。  疲れているのに、頭の芯が冴えてしまって寝付けない。それでもよう...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (八)

早朝に屋敷に駆け込んできた者のただならぬ叫びに、夜光も葵も飛び起きていた。  葵は天休斎と一緒に、寝巻きの上に羽織を羽織っただけの姿で、取るものも取りあえず屋敷を飛び出していった。  二人が駆け付けると、既に厩舎の入り口にはざわざわと人垣が...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (七)

山姿(やましな)神社の祭殿が荒らされ、宮司が殺害されたことで、耶麻姿の里は大騒ぎになった。  各々の収穫作業は続けられたが、すっかり収穫祭どころではなくなり、里のほうぼうで造り途中だった祭り飾りや道具類が放っておかれるままになった。  御社...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (六)

山近くの畑一帯が何者かにひどく荒されてしまった、という一件については、さもありなん、里で大騒ぎになった。  幸い半分以上の畑では収穫を終えていたが、残りの畑は葉の一枚、茎の一本まで無惨に荒されており、これから実るぶんもあわせて、到底まともな...
妖は宵闇に夢を見つ 蓬莱編

遣らずの里 (五)

夜光と葵が耶麻姿家の世話になり始めて、数日が過ぎた。  最初のうちは本当に素顔を晒しても大丈夫なのかと不安だったが、少なくとも屋敷の者たちは、夜光を見ても避けたり恐れるようなことはしなかった。  ただの食客でいるのも気兼ねするので、旅の疲れ...